今年のK-1を盛り上げた英雄たち。

身体的優位とスキルにより勝利したシュルトはやはり観客を味方につけられず、今回の主役になったのは、現役引退試合となったホーストと、リザーブマッチから勝ち上がったアーツだった。どちらもK-1立ち上げ当初から戦ってきたファイターである。

彼らの思い出深い試合。

ホーストの忘れられない試合は、彼にとっての"次世代ファイター"だったバンナとの試合。スピードとパワーを押し出したボクシングスタイルでGP トーナメントに出場したバンナは、1回戦でアーツと激突。一度はアーツのハイキックによりダウンを喫するが、パンチでの攻勢で「K-1四天王」の一人を崩 し、逆転KO勝利。

続くホーストとの2回戦。バンナは1回戦の勢いそのままに、テクニックNo.1のホーストをも相手にスピードとパワーで圧倒する。「瞬きの間に終わ るK-1」。薄氷を踏みながら試合を進めるホーストは、バンナに対してカウンターのショートストレート。完璧なタイミングのダメージに、バンナは楔を打ち 込まれたように突然攻撃の手が止まる。そこからはホーストのための10秒間だった。

相手の動きを止めたホーストは、続けざまに細かいフックやストレートの連打。初めはガードの上から受けていたバンナも、左右に揺さぶられる「詰め将棋」の攻撃の前に、10連打をもらったあたりで卒倒のダウンを喫する。

圧倒的な攻めを見せていたバンナに対して、ほんの小さな穴をキリで開けたホーストが、そこから一気に堤防を切り崩した芸術的なシーンだった。

ホースト。細身のその体ながら(当初は特に)、無差別級のK-1の舞台で14年間に渡って闘ってきた功績は、本当に素晴らしいものでした。体格よりもスキル、パワーよりもテクニック、そのような好みのファンにとって、あなたは一生記憶に残る素晴らしいファイターです。


アーツは初期のGPを連覇したが、倒したり倒されたりと、非常に激しい試合を見せてくれることが多かった。前述のバンナとの試合では、先にダウンを 奪いながら壮絶に吹っ飛ばされての逆転負けで、ホーストの「安心」した戦い方とは真逆だったように思える。細い手足を振り回して、感覚で戦っているかのよ うな印象が強かった。

そのアーツで一番思い出深いのは、やはりボロボロに負けた試合。相手は、WBF世界王者になって戻ってきたベルナルド。 ベルナルドは当初パワーの みが売りのようなファイターだったが、他の「四天王」には通用せず、スピードとテクニックを身につけるべくボクサー修行を終えてK-1に戻ってきた頃だっ た。

相変わらず天然のスタイルで戦うアーツは、明らかにファイターとしてのレベルが上がったベルナルドの攻撃を受け続ける。何度もダウンしながらも、フ ラフラになって立ち上がるアーツ。自分のプライドを守る、ただそれだけのために動き続けているようで、どうしようもないほどそのボロボロに感動した。最後 は吹っ飛ばされて、マットにひれ伏したけど、それは本当にカッコいいボロボロっぷりだった。

入れ替わり続けるファイターの世代。

95年ぐらいからK-1を見ている世代は、各ファイターの「世代」をなんとなく区分けして見ているのではないだろうか。私が思うところには、大体三世代程度に分かれる。

第一世代アーネスト・ホーストピーター・アーツマイク・ベルナルドアンディ・フグ佐竹雅昭
第二世代ジェロム・レ・バンナミルコ・クロコップ・フィリポビッチ、ステファン・レコグラウベ・フェイトーザ、武蔵、(帰ってきた)マイク・ベルナルド
第三世代~セーム・シュルトレミー・ボンヤスキーアレクセイ・イグナショフガオグライ・ゲーンノラシン

得てして次世代のファイターは、これまで旧世代の選手を見て育ってきたため、より"体格よし、スキルよし"の優秀な選手が発生しやすい。旧世代の ファンとしてK-1を見ている層は、当初はこのような選手に対して「体がデカイだけやろ」「テクニックじゃ、○○には敵わんやろ」という、身びいきともい える否定的な感情が生まれやすい。

やがてそのような次世代の選手も、時を得るにつれ、いい戦いぶりを見せるにつれ、これまでの視聴者にも受け入れられてくる。そういった中で、また新しい世代の選手が発生し、これまでの世代の選手と戦い・・・ そして歴史が作られてきた。

わずかながら生まれ続ける珠玉の試合。

最近のK-1では、ディフェンスの成熟のためか退屈な試合が多くなっているが、その中でも毎回1~2試合は感動するような試合が生まれる。

今年の予選では、最大級のファイター チェ・ホンマンに対し、いつも通りのアグレッシブなスタイルを貫いたジェロム・レ・バンナ

決勝ラウンドでは、第一世代のロートルであるアーツが、スキル・体格全てに充実する現役王者・シュルトを押し込んだ第2R。

このような試合を見るために、いまだにK-1を見ている層は大きいのではないかと思う。レコーダーが充実する現在では、控え室前で台本を読み上げる 女子アナや、とってつけたような選手インタビューのようなコンテンツは、視聴者にとってハードディスクの無駄容量でしかないことを制作側は見つめなおし、 もっといい試合を生み出す努力にリソースを注ぎ込んでほしいものだ。